『線路のない時刻表』~時代の変遷に思いをはせて
2015年 10月 20日
旅にまつわる1冊の本を毎月ピックアップしている「タビノホンダナ」。
今月は、10月14日の【鉄道の日】にちなんで、そのスジの古典?とも言える
ちょっぴり古い本を引っ張り出してきました。
『線路のない時刻表』 宮脇俊三 著 (新潮文庫版 1989年初版)
宮脇俊三氏は、『中央公論』編集者でもあり、紀行作家で知られ、数々の鉄道紀行の
著書のほか、地理や歴史に詳しく多くの旅に関わる著してきました。
2003年に76歳で亡くなられていますが、いまでも良く知られた方で若い人にも
ご存知かもしれません。
さて、この『線路のない時刻表』という変わったタイトルの著書ですが、作品としては
当時は大赤字の国鉄(いまのJR)の転換期にあたるころのもので、多額の資金を
投入して整備が進められていた新設路線の工事現場を巡るというものなのです。
8編の紀行文がまとめられたこの著書には、まだ未開業の「瀬戸大橋」「青函トンネル」
といった国家一大プロジェクトの鉄道建設の当時の工事状況や現在は地域の足として
欠かせなくなっている「智頭線」(現材の智頭急行)、「三陸縦貫線」(三陸鉄道)、などの
ほか、今年開業となった【北陸新幹線】まで、首都圏と北陸を結ぶ最短最速ルートでも
あった「北越北線」、現在の【北越急行線】(六日町~犀潟・新潟県)の工事現場を、
わざわざ豪雪期に訪問記などが収められています。
そして、この本の最大のポイントともいえるのが、開業時の「時刻表」が掲載されている
というところではなかったでしょうか?
もちろん、建設中であるから、実際の時刻表など、存在するはずもなく、あくまでも
想像(妄想?)のものであって、注釈部分には「宮脇俊三作 国鉄非監修」と記されて
います。
民営化されて久しいJRを中心とした現在の日本の鉄道網を考えてみたとき、
かつての国鉄時代に整備がされていた路線も地方路線は巨額の赤字を抱えて
廃止されていったものも数多くあります。
【北陸新幹線】の開業によって、氏の想像した時刻表はすでに時代はさらに
飛び越えています。「青函トンネル」も来春には【北海道新幹線】が走り出します。
まさに隔世の感があります。
だからこそ、先人たちがどんな思いで鉄道を敷設するために努力をされてきたか
いま読み直してみるのも一興ではないでしょうか。
※ちなみに、この『線路のない時刻表』には、完成後の「全線開通版」というのもあるらしいです。興味のある方は こちらも探してみてください。私も読んでみたいです。
by tabinoirodori
| 2015-10-20 09:36
| タビノホンダナ
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